【中学受験で読んでおきたいマンガ】アドルフに告ぐ(手塚治虫)レビュー

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中学受験よもやま話
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本日はおすすめマンガのレビューです。

え?なんで中学受験ブログでマンガのレビューなのさ?…と思った方はこちらからどうぞ。

 

近代史、特に大正~昭和にかけての戦争の歴史は、中学受験でもよく取り上げられるテーマです。今回のエントリーは近代史絡みで、「アドルフに告ぐ/手塚治虫」のご紹介です。

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問題:第二次世界大戦開始のきっかけとなる事件は?
答え:ドイツのポーランド侵攻

問題:冷戦で国が二つに分かれてしまったことのある国は?
答え:ドイツ・ベトナム・韓国(今でも大韓民国/朝鮮民主主義人民共和国)
※もっとあるけど中学受験的にはこれで十分

…なんて会話もマンガをきっかけに親子でできちゃったり。
ともあれ、「アドルフに告ぐ」のレビュー、まいります。

アドルフに告ぐ/手塚治虫 とは?ーあらすじ

時は1936年、戦時色が濃くななりつつある昭和初期。ベルリンオリンピックが開催されている中、ある日本人が「ヒトラーはユダヤ人である」という秘密を握ったことにより、何者かに殺されたことから物語がはじまります。

本作の舞台は、戦中の神戸とドイツ。殺された日本人の兄・峠は弟の無念を晴らすべく、両国を奔走します。※ちなみに峠は主人公の一人であるとともに、この物語の進行役のような役割も担っています。

しかし、無念を晴らすことは同時に弟が握った秘密を握ること。峠はゲシュタポや特高、さらにはソ連のスパイなどから執拗に追われることになります。

タイトルにあるアドルフは、アドルフ・ヒトラーのアドルフ、そして物語の主人公であるユダヤ人のアドルフとアーリア人の血をひくアドルフの3人のアドルフを指します。

主人公の2人のアドルフは幼いころに友情を誓い合いますが、とあることからヒトラーの秘密に巻き込まれ、時代の波に翻弄され、すれ違い、それぞれの人生を歩むことにー。

峠、2人のアドルフ、それぞれの運命やいかに??

中学受験的おすすめポイント

①物語の背景となっている時代・価値観について学ぶことが出来る

物語の中心となっている時代は、第二次世界大戦、中学受験的には、二・二六事件が起き軍主導の政権と戦争の足音が大きくなってきた頃です。

ドイツでとられた民族主義や、日本で不都合な情報を取締まっていた特高など、こみるや三菜がぬるんと生きている時代では考えられないような組織や価値観が出てきますが、マンガの中に出てくる描写やセリフを通して、自然と「そういうものか」と理解できるようになります。

また、ところどころ男尊女卑的?家父長的?な思想に基づく描写も出てきます。これは、現代においては「男女平等っしょ。何のこと?」的な家庭も多かろうと思いますが、その時代がそういう時代であるということを感じ取れるという意味で有用です。

例えば読解では、向田邦子の「字のないはがき」や「傷だらけの茄子(台風の話のエッセイ)」が題材となることがありますが、こういった時代だったんだという背景がピンと来ていれば、「お父さん、コワっ。でも、この時代とはそういうものだったからね」、とすんなり入るかもしれません。

②登場人物の想いを考える

本作は、1つの視点に偏らず、異なる立場をそれぞれの見方で描写しているのも特徴です。

様々なキャラクターが登場しますが、特にアドルフ・カウフマンの複雑な想いについては、難しいので一緒に考えてあげる必要があります。

概要にも書きましたが、主人公である2人のアドルフのうち、片方のアドルフはユダヤ人、もう一方のアドルフであるアドルフ・カウフマンは、日本人の母親を持ちますがアーリア人の血もひいています。

こちらのアドルフは、ナチスドイツの一員となっていく過程で、ナチスの思想とアドルフとの友情に悩みもがき、愛する母への手紙を通してハーフである自分は何者なのかを問い、自分なりの答えを出していきます。

あろうことか、アドルフ・カウフマンの人生には峠の人生が関係してきて、あー、もうどうしてくれるんだよ…という展開になるのですが、それはさておき。

三菜を見ていますと、精神年齢幼めの子というのは、本人が抱く感情がすごくシンプルなものだと感じます。ですが、中学受験では、精神年齢幼めの子が、本人が普段思いつくこともないような感情が描写されたり問われたりします。

ですので、マンガを通してこういった複雑な感情の読み解きを親子でチャレンジするのもありなのでは、と思います。特に迫害する側の苦悩は、飲み込み悪目さんにはかなり難易度が高く、親の解が必須です。

③複数の登場人物や出来事を整理しながら読み進める訓練に

新装版ではたった3冊のマンガですが、その割に登場人物がかなり出てきます。

飲み込み悪目さんの場合、複数の登場人物とそれぞれの物語がでてきますと、今、誰が、何のためにどうしようとしているのかが混乱してまいります。

文字だけの小説でしたら、間違いなく、迷宮入り確定。あー、わかんない。やーめた。…となるでしょうが、本作ではそうはならない。三菜も、時々状況を親に確認しながらではありますが、ちゃんと読み進めることができました。

これがマンガの良いところだ!…と、こみるは思います。

小説でこういった複雑なものを読みたいけど、ちょっとスキルがね、という場合の導入にもなるのではと思料。

もはや、大河ドラマ。是非オススメしたい!

とりあえず親が読んでみて損はない作品

いろいろ書き連ねましたが、とりあえず親が読んでみて損はない作品だと思います。

一言でいうと、もはや、大河ドラマです。

この「アドルフに告ぐ」は、そもそも連載先が週刊少年ジャンプの類ではなく、週刊文春だったそうで、そのあたりからも大人が満足できそうな作品であることがうかがえましょう。

夏の猛勉強のあとに待ち受ける模試を前にして、子よりドキドキしてしまうあなた。
本書でアドルフの世界に浸り、気を紛らわしてみてはいかがでしょうか。

新装版のほうがコンパクトで、おススメです。

 

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注意事項

お咎めの言葉をいただくのはアレなので一応書いておきますが、こちら元々大人向けのマンガなので、ほんの一部男女のそれなりの表現がでてきます。手塚作品ですから絵の表現として全く生々しいものにはなっていないと思いますが(※こみるの感覚)、こういうことの気になり度合いはご家庭によるというもの。こみる的には気にならず三菜もフツーによみましたが、胸がざわざわした方は一度ご自身で読んでから子へのお渡しをされるとよいでしょう。「そんな注意点があってなんでおススメなの」と難色を示されそうですが、それも覚悟の上。それでもおススメしたい素晴らしいマンガなのです。

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