中学受験の歴史の勉強でよく耳にするのが、「歴史は本格的に勉強する前に、導入としてマンガを与えて全体像を把握しましょう」という話。
実際、学研や集英社などから全十数巻程のマンガが発売されていて、推奨されてますね。口コミもなかなかよいものが多く、通説と言ってもよさそうです。
今回は、中堅中学を目指す三菜はどうだったのか?…の実体験も踏まえて、「歴史の導入はマンガで」について検証いたします。
親の目論見で歴史マンガを三菜に与えてみた話
「マンガで歴史の流れでをつかむ」という施策は、勉強がそれほど好きではない子供にとっては当然有効な策であろうと思っておりましたので、ネットの口コミをアレコレ読み漁り、
・子供的にイラストのタッチが好み
という理由から、角川の歴史マンガを大人買い。5年生の夏前くらいでしたでしょうか。
ところがどうでしょう?
旧石器時代や卑弥呼辺りはパラパラと読んでいた三菜ですが、2巻目以降パッタリ読まなくなりました。「これを読んで歴史の準備は夏休み中にバッチリ!」…という母の目論見はあっけなく崩れ去ったのです。
なぜだ!! 15,000円くらいしたのに…。
まぁ、三菜は結果的に無塾者になりましたので、今後の塾代などを考えれば安い投資だった、ということにします。
実は、角川が撃沈した後、これはどうかあれはどうかと、3種類のマンガを試しました。
角川類似の集英社・学研・小学館は似たようなものであろうと除外。それ以外で、複数巻からなるマンガはお試し1冊で様子をみました。全巻取り揃えは角川の件で懲りましたので。
①ドラえもんの社会科おもしろ攻略 日本の歴史 1 旧石器時代~平安時代
②ドラえもんの社会科おもしろ攻略 日本の歴史 2 鎌倉時代~江戸時代前半
③ドラえもんの社会科おもしろ攻略 日本の歴史 3 江戸時代後半~現代
色々買ったね。で、どれがよかったの?
結論を申し上げますと、「導入」については「どのマンガでもできなかった」のです。
国語の苦手な子にとっての歴史マンガを検証する
三菜の反応は、15,000円の角川のパラパラ見て終了…と大差ありませんでした。
これは一体全体、どういうことなのでしょう?
受験勉強を終えた三菜へ当時の思い出などをインタビューしつつ、検証してまいります。
歴史マンガはマンガのくせに文章が多過ぎ
なに言ってんの?
マンガの方が参考書より字が少ないんじゃないの?
それはその通りです。
例えば「予習シリーズ」はカラーで図表が豊富ではありますが、基本は文章のみで歴史を追っていく必要があります。一方、歴史マンガは「マンガ」ですから、絵を追うのが基本。ですので「予習シリーズ」よりはハードルが低いです。
ですが、この歴史マンガとやらは、いわゆる小学生に馴染みのあるようなマンガとは質が違いまして、ストーリーと同時にマンガ中の文章、更には「注釈」をしっかり追っていかないとなんのことやら訳がわからないのです。
特に、角川をはじめとする十数巻の歴史マンガは総じて字が多いです。
読解が苦手な子にとって、マンガとはいえこの分量の文字(しかも説明チック)を読みながらストーリーを把握していくのは難行苦行なのです。導入というよりはむしろ勉強本番の感覚…
内容が詳しすぎる
導入にしては内容が詳しすぎるものが多いです。
大化の改新で中大兄皇子たちが蘇我蝦夷親子を倒した場面を角川のマンガで例に挙げますと、
・うち、聖徳太子が危うくなってからの跡継ぎ争いに9ページ割かれる。
・出てくる人物名は濃度の差はあるものの16名!(中大兄皇子、中臣鎌足、蘇我蝦夷、蘇我入鹿、聖徳太子、橘大郎女、推古天皇、舒明天皇、古人大兄皇子、山背大兄王、南淵請安、蘇我倉山田石川麻呂、軽皇子(孝徳天皇 )、高向玄理、旻、孝徳天皇)。
え?え?えええ???一体、誰が誰なんだ???
はい、この時点で国語の苦手な子は登場人物が多すぎて既にめまいがしてきます。三菜に聞きましたところ「情報量が多すぎでチラチラする」とのこと…これでは肝心の概要が押さえられません。結果として「何となく流れが分かればいい」にすらたどり着かないという顛末…。
こみるが考える「国語苦手組に相応しい導入レベル」は、上記の大化の改新であれば
②蘇我氏としては山背大兄王が邪魔だった。
③中大兄皇子と中臣鎌足が横暴な蘇我氏を何とかしようとした
④儀式の際に蘇我氏を討伐
⑤中大兄皇子は公地公民などの改革を行い、天智天皇になった
このくらいの内容にとどめるのが適切でしょう。でないと混乱必至。
ちなみに社会の四谷偏差値で40近くをウロウロしている場合は、このあたりの流れや基本人物名すらはっきり書けないおそれありと推察。ですので、これ以上の内容が書いてある歴史マンガは「導入」になるはずがないとも言えましょう。
※勿論、難関校を目指される方には「導入」「知識の定着」としては角川の歴史マンガは最適なのかも。物足りなさすらおぼえるのやもしれません。
角川のマンガの内容が出たとかでないとか、そんな話もききますしね
そもそもの「用語」がわかっていない
「文章が多過ぎ」の話にやや関連しますが、歴史や後にでてくる公民には、小学生には馴染みのない言葉がわんさか出てきます。
例えば「豪族」「天皇」「みかど」「摂政」「皇帝」「朝廷」など。我々大人には「え、何が困るの」と思うような言葉たちです。一応、マンガにも本文や注釈にカンタンに説明が書いてありますが、文章読解が苦手な子にとってはそんな注釈を行ったり来たりしないと読めない文章というのは、もはや暗号レベルです。
文字に強いって大事だね
<余談>イラストがピンとこない
実は歴史マンガのセレクトにあたり何より重要なのは子供にとって「イラストがピンとくるかどうか」も重要な気がいたします。え?そこ?…と思われる方もあろうかと思いますが、これは結構キモです。
絵なんてどうでもよくね?…重要なのは内容でしょ?
飲み込みの悪い子・精神年齢の少し幼い子にとっては、自分にピンとこないイラストの歴史マンガなど、マンガの外観を装った勉強以外の何モノでもありません。ですから、読破しようなんて気にならないのです。
但し。
恐らくですが、1を言えば10分かる成績優秀なお子様には当てはまらないものと推察いたします。そのようなお子様はイラストが好みだろうとなかろうと「自分のためになることがわかっている」ので、親の目論見通り読み進めてくれることでしょう。歴史好きなお子様も然り。
ちなみに前述の「朝日学生新聞社 日本の歴史 きのうのあしたは」は全7巻ですので、角川よりコンパクト。三菜に1冊お試しで読ませてみましたが「なんか絵が嫌い」という理由で却下でした。
途中重要語句の漢字練習のページもありますし、「マンガの装いのくせに『実は勉強でした』感」が満載だった模様。
親的にはとってもいいんだけどね…
「ドラえもんの歴史マンガ」はみんな大好きドラえもん~…が案内役ですので、絵としては申し分ないのですが、前出のマンガとは少し毛色が違いました。実はマンガではなく参考書に近いです。
浜学園が監修しているそうで、内容としてはしっかりしていると思いますが、他のマンガと決定的に違うのは、全編がマンガではないところです。
マンガなのにマンガでないのか??
いわゆる「コマ割りのマンガ」となっているのは、各チャプターのほんの導入部分。ドラえもん+のび太+そのチャプターの重要人物でそのチャプターの導入を済ませた後は、数ページにわたり参考書レベルの説明がずらずらと続きます。一応、ドラえもんやのび太がページ内で合いの手を入れたりしていますが、基本は説明。
なお、マンガと銘打っているだけあって絵は多いです。
ですので、予習シリーズよりは簡便な参考書のようなマンガという位置づけになるかと思料いたします。
結局どうしたか
我が家では結局、導入としてのマンガは使用せず、5年生の9月より、スタディサプリ+親塾で歴史の勉強に取り組みました。*歴史の勉強については別エントリーの予定です。
ちなみに、導入にこそ使いませんでしたが、受験の当日まで三菜のお供をしていたマンガは「中学入試まんが攻略BON! (全2巻)」の薄っぺらい2冊のみでした。
詳細は別記事に譲りますが、結果として「歴史マンガ」の導入なしで歴史の勉強に取り組んでも、中堅中学レベルではその後に影響はなかった、というのが所感です。
それでも買っておくことに意味はある
そんなわけで我が家には受験に全く貢献しなかった角川の歴史マンガ15冊セットは、5年の夏からヒッソリ本棚に並んでいたのですが、受験が終わったある晩のこと、このマンガが日の目を見る出来事が起きました。
NHKで2.26事件のドキュメンタリー番組が放送されていて三菜と見ていたのですが、三菜、なかなか興味深かったようで「2.26事件ってそういうことだったのか」とおもむろに角川の歴史マンガの該当巻を手に取って読み始めたのです。
その後、該当巻以外もしばらく読んでいたようでした。
15,000円が報われた!?
角川のマンガは我が家の場合「導入」に全く貢献しませんでした。
受験勉強によって基礎的な知識がつき、テレビにより興味が喚起され、ようやく読まれるという、想定とは逆パターン…。
…でも、それでもよいのです。
本は興味を持った時が読み時というもの。
その子にとっての「読み時」はそれぞれ違って当たり前です。
また、受験勉強当時は壊滅的な読解力で精神的に幼かったとしても、徐々に成長して読めるようになる日はきっとくる…そういうことだと思うのです。
中学入試まんが攻略BON!歴史のレビューと使い方はこちらをどうぞ♪
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